トラブル対処法
2002年3月 北海道新聞
国民生活センターによると、2000年4月から2年間でプチ整形が原因と思われる苦情相談は129件もあったという。「眼の下にコラーゲンを注入したら、顔の筋肉が傷ついて赤紫のあざができた」「しわをとるために額に注射をしたら、顔の筋肉を傷つけたせいか、まぶたが上がらなくなった」「美白しようとレーザーを照射したところ、赤く腫れてあとが残った」などなど。
2000年5月 産経新聞
国民生活センターによると、平成3年には25件だった美容外科関連の苦情は、12年には187件と7倍を超えた。
2000年2月 産経新聞
全国の消費者センターの集計では、平成11年度の1年間にピーリングエステの被害が約90件発生。顔にやけどの傷が残ったというケースが40件にのぼった。こうした事態を受け、国民生活センターでは「注意情報」を出して消費者に注意を促した結果、平成12年度には82件に減少。危害件数も28件に減った。
2000年10月 読売新聞
美容外科クリニックでトラブルを抱え、大学病院を受診する人は、新規患者の1割以上にのぼることがわかった。手術後の腫れを「特異体質」と片づけられたり、手術器具を体内に残すなどのずさんな手術が行われていたケースだが、大学病院は「大半の患者は民間のクリニックを転々としており、来院するのはごく一部」と指摘している。
2000年10月 読売新聞
国民生活センターには、費用の高額請求についての相談が殺到。「脂肪吸引術の相談に行くと、翌日手術することになり、契約書に拇印を押した。その夜、やめることにしたが、20%にあたる14万5000円を請求された」「脂肪吸引の広告をみた娘がクリニックに相談に行き、総額97万円の契約をしてきた。手術は2日後で、解約を頼むと、26万円請求された」などの相談。
最近めっきり減ったトラブル その理由はなぜ?
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上記は、新聞に報道された美容整形へのトラブル例です。国民生活センターによるものを中心にピックアップしましたが、現在、国民生活センターのホームページで苦情検索をしてもまったく出てきません。「美容整形」「美容外科」「プチ整形」……いずれの検索ワードでも1件もヒットしません。苦情の届出がないということなのでしょうか。そういえば、新聞検索をしても美容外科へのトラブル例が最近めっきり減っています。いったいなぜ?
2001年くらいまでの数年、劣悪な環境にある美容外科クリニックが起こした事件が相次ぎ、美容外科は非常に危険なもの、詐欺まがいの商売のように書かれたりしましたが、多分、そうしたクリニックが淘汰されたこと、機器類の日進月歩によってトラブルを起こす例が少なくなったこと、美容外科医の社会的地位が以前よりも確立されたことなどが、マスコミに登場する機会を少なくしているのではないか、と思われます。
大学病院の美容外科はクリニックのトラブル処理機関ではない
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今から3年前、巷の美容外科クリニックでトラブルを起こした患者が大学病院に駆け込む、という記事を読売新聞が掲載。あたかも大学病院の美容外科は、美容外科クリニックのトラブルを処理してくれるところのようにさえ思えますが、とんでもない間違い。大学病院が美容外科を標榜する大義名分として、クリニックでのトラブルを救うために「大学でも美容外科を訓練すべき」と判断したから、としているようですが、実はその背景には経営判断があり、患者取り込みの一策といえることを同年の産経新聞が伝えています。
そもそも大学病院の美容外科医は形成外科医であり、本来的な美容外科医ではありません。「美容外科は、在野医、つまり町の外科医が長いこと研鑽・開発・努力して花を咲かせ、実らせた唯一の診療科目である」と標榜科目に認定された祝辞として、当時の日本医学会会長が述べているように、美容外科は機能回復の延長線上にあるものではなく、もともと必要あって美を求めた医療なのです。
しかし、このまちがった調査のおかげで、結果はかえってクリニックに加担するものとなりました。美容外科を正式な診療科として掲げている昭和大学、北里大学、東京大学の3大学に調査の結果、トラブルの原因は医師の説明不足にあると思われるケースがほとんど。明らかな技術の未熟さが原因になったトラブルはわずかに2例。つまり、ほとんどのトラブルはインホーム・ド・コンセントによって回避できるものでした。最近、周知徹底されつつあるインホーム・ド・コンセントがトラブルを極端に少なくしているのかもしれません。
トラブルチェックの回避表
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しっかり情報収集をし、医師の事前説明を理解することが大事です。
自分が受診しようとしているクリニックの情報を十分に集めること、そして事前に医師からしっかりと説明を聞くことで、美容外科のトラブルのほとんどは回避できます。具体的には下記を参考にチェックしてみましょう。- 自分がなぜ美容整形を受けたいのか、どの部分をどのようにしたいのか、漠然と考えているイメージを明確にしましょう。
- いくつかのクリニックのカタログを集めたり、ホームページで検索するなどして、設備などを比較してみましょう。専門的知識がないと、どれが最新なのか、どんな機器がよいのかわからないと思いますが、しっかりと比較すれば、総合的な判断はくだせるものです。
- あなたが選んだクリニックで手術した人がいますか。紹介者がいると安心です。
- 紹介者がなく、雑誌などの広告で知ったならば、待合室で待っている間に、そっと隣の患者さんに話しかけてみましょう。その患者さんも初めてだとしても、もしかしたら紹介者からの評判を聞いているかもしれません。
- 初回の相談で即決する必要はありません。しっかり説明を聞いて、もう一回考えてみる余裕をもちましょう。聞く説明内容は下記のようなことなどです。
- どんな手術をするのか
- どのくらいの時間がかかるのか
- 痛みなどのダメージはないか
- ダウンタイム(復帰するまでの時間)にはどのくらいかかるか
- 費用はいくらか
- ローンが可能か
- トラブルが生じたときにどのように対処してくれるのか。緊急の場合はどうするのか、電話での相談も受けるのか
など詳細に聞きましょう 。
これらをしっかり聞いて理解しておかないことがトラブルの元凶になっています。できれば、それらのことを記載してあるような書類があればもらってきましょう。その際、費用も明記してもらいましょう。- 自分を担当してくれる医師の名前を聞き、キャリアを尋ねておきましょう。
- それらの情報をしっかりと検討し、決心が揺るがないものならば、早速予約をしましょう。ぐずぐずしていると、せっかくの決心が鈍ってしまいます。
トラブルが起きた時の対処法
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- いかに簡単な手術とはいえ、外科手術を受けたのですから、それなりのダメージはあります。問題になるのはそのダメージの内容。手術前に聞いたことと違う場合には、かならず担当医に相談しましょう。
- 不安があれば、まずは担当医を訪れ、不安が解消できるまでしっかり尋ねてください。思ったよりもダメージが強く出ても、それが許せる範囲であるかどうかを判断しましょう。
- 判断ができないときには、別のクリニックに相談したり、大学病院に駆け込むことはできれば避けたいものです。