美容外科とは

美容外科ってなあに?

人間関係のスタートラインは第一印象。その印象を形成する80%は顔からの情報といわれています。むろん、その情報源は造型的な要素ばかりではありません。表情も非常に大事です。しかし、順位をつけるとするならば、まず造型的に整ってこそ、表情もまた豊かになるのではないでしょうか。目の周囲のシワが気になっていれば、破顔一笑は控えてしまいます。歯や唇に気になることがあれば、そこから発する言葉にブレーキをかけ、自分らしさを積極的にアピールできなくなってしまいます。

もし、自分の容貌にコンプレックスをもち、それ故に引っ込み思案になり、十分な自己表現ができないとすれば、それは容貌が心を歪めているといえないでしょうか。病気で体が歪めば、すぐに治療の対象になるのに、容貌が原因で心が歪んでいるのに、それを治療しないのはおかしい……治療によって患者の生活の質を向上させ、アクティブな人生を取り戻すことができるならば、それも立派な医道ではないか……そう考えた医師たちによって、1978年に診療科として認可されたのが美容外科です。

美容整形をするのは ポジティブ志向の賢い人

「身体髪膚これ父母の受く、あえて毀傷せざるは孝のはじめなり」……ひどくむずかしそうですが、簡単にいえば「身体は両親から授かったものだから、あえて傷つけたりしないことが親孝行のはじめなのだ」という儒教思想です。戦前はもちろん、戦後……いえ、プチ整形なる言葉がマスコミ紙上を賑わし、すっかり市民権を得たような現代にあってさえ、まだまだ美容整形には後ろめたさを感じている人も少なくないかもしれません。

しかし、父母からもらった体にメスを入れてでも、人並み、あるいは人並み以上の容貌を獲得すれば、確実に精神的なコンプレックスは払拭でき、積極性が増し、能力を最大限に表現できるようになります。容姿コンプレックスを抱え込んだまま、その持てる力を半分も発揮できないまま生きるよりも、ずっと親孝行なことではないでしょうか。

美容外科は、もっと積極的に生きたい、自己実現したいと望むポジティブ志向の人が訪れる診療科であり、それを可能にするのが美容外科医なのです。

美容外科と形成外科 その治療目的は全く違うもの

美容外科※1を訪れるのは、病人ではありません。どこも痛くないし、かゆくもありません。容貌がコンプレックスになっていたとしても、機能的には何の不都合もありません。もし、その容貌が日常生活に不都合を生じさせるほどひどいものならば、それは形成外科※2の分野といえます。

美容外科の分野を「美容整形」と表現することが多いために、整形外科※3、形成外科と混同されることが多いようなので、ここで3つの診療科を明確に線引きしておきましょう。

骨や関節を扱う整形外科は、明らかに分野を異にするため、混同されることはほとんどありませんが、美容外科と形成外科とは、扱う部位が同じであることから、歴史的にそして現在でさえも、混同され、誤解され続けています。

形成外科は「美容にあらず“整容”外科である」ことを主張してきた分野の医学です。まず“そこに異常ありき”が形成外科の治療対象。異常を正常にするのであり、単なる美容のために治療するのではない、ことを強く主張してきました。

美容外科は創設当時から、機能的には何の支障がなくても、それが精神的負担をもたらすものであるならば、美的に形成して負担の除去、軽減をはかろうという美容を目的とした医療です。機能的に何の異常もない健康な部位を治療するのですから、健康保険の適用外。自由診療になります。形成外科は機能異常が大前提ですから、当然、健康保険の適用を受けます。本来的にその目的がまったく違います。

  • ※1美容外科の定義
    身体各部における表面の器官、組織(眼、鼻、顔面、皮膚など)の形状について、これに起因する精神的負担の軽減、除去効果も考慮し、この形状をより美的に形成することを目的とする臨床医学の分野。
  • ※2形成外科の定義
    身体各部における表面の器官、組織について機能異常を伴う形態異常(口唇裂、外傷または熱傷による瘢痕、外傷による顔面の変形など)にある場合、これを修復再建することを目的とする臨床医学の分野。
  • ※3整形外科の定義
    骨、関節などの分野(骨折、関節炎、骨肉腫など)を対象とする臨床医学の分野。
  • 同じ名前の2つの学会の不思議 その本質を知ることもトラブル回避のコツに

    ところがこの目的の違う2つの科が、まったく同じ学会名を名乗っていることをご存じでしょうか。日本には「日本美容外科学会」という名の学会が2つあります。ひとつは私どもの「日本美容外科学会」です。

    1966年、「日本美容整形学会」を前身とし、1978年に「美容外科」の公的認可を受けて「日本美容外科学会」と改称した学会です。そしてもうひとつは、もともと「日本整容形成外科研究会」を前身とした「日本美容外科学会」。形成外科を中心とする開業医、大学病院や一般病院勤務の形成外科医で構成されている学会です。

    この2つの学会は日本語では同じですが、英文になると違っており、私ども美容外科系は「JSAS」、形成外科系は「JSAPS」となります。違っている「P」の文字は「Plastic (形成)」の一文字……。

    現在の美容医療界では、こうした競合乱立が目立ち、患者からのクレーム、訴訟といった不祥事が多発しています。これは、美容外科が健康保険の適用外であり、自費診療であることから、治療費の設定が自由であること、医師の資格をもっていれば専門外でも簡単に標榜できることなどにより、他科医が参入したり、企業までもが進出し、にわか美容外科医が横行することによるものと考えられます。

    こうした事態に対し、1992年に当時の厚生省の肝入りで「日本美容医療協会」が創立しますが、設立当初より形成外科主導型の協会であり、主旨の不明朗さから不参加が相次ぎ、1997年に当学会の傘下として「日本美容外科医師会」が発足。美容医学の推進と美容医療の質向上を目指す目的で、美容外科医師が中心となった活動しています。また当医師会では患者との窓口の役割ももち、メールなどによる相談も受け付けています。

    美容外科とは、何を目的としてつくられた診療科であるのかをしっかりと知っておけば、おのずと自分の受ける治療の本来の姿を見出すことができ、その心構えがトラブルを回避できる良策のひとつにもなるはずです。

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